2022年B3学生配属

2022年B3学生配属のための説明ページです。より知りたいことがあれば,羽山(t-hayama@kjs.nagaokaut.ac.jp)にメールしてもらえれば,回答します。また,希望すれば,研究室の学生とのお話や研究室見学することができます。

現在,研究室で取り組んでいる研究プロジェクトは,主に以下の5種類になります。研究室としては,これら研究プロジェクトのなかで,課題を見つけ,解決するような研究テーマに取り組んで頂きたいと思います。

  • 加速度センサひとつで人間行動認識を可能にする技術の開発

人間の行動や振舞いを情報技術で認識し,個人に適した新たな情報サービスに利用しようという試みは,ヒューマン・インタフェース分野(ウェアラブル)において,重要な課題のひとつです。その人間行動認識を簡易なデバイスであれば,日常使いが容易であり,有用性が高いのですが,その認識のレベルが低くなります。例えば,万歩計(スマホでも)では何歩あるいたか程度(さらに高度な処理を用いても,歩行のストロークや速度の認識)です。そこで,大規模データと高精度な識別器を活用することで,加速度センサ一つでも,人間の行動を高度に認識できると信じ,その技術開発に取り組んでいます。

具体的に,研究では,対象活動中の加速度センサの時系列データを取得し,データをクリーニングするためのフィルタ等の事前処理をし,機械学習(深層学習やクラスタリング等)により,対象行動を高度精度に認識するための手法を開発しています。そのために,それ以外の対象行動データ(例えば,モーションキャプチャや加速度センサによる他の部位の動作データ)も収集し,活用したりしています。今年は,腰付近に付与した加速度データから,両足動作の認識方法を研究開発しています。

  • 高精度な屋内位置情報に基づくユーザコンテキストアウェアサービスの開発

位置情報サービスはユビキタス環境やIoT環境を実現するうえで,重要な要素技術のひとつです。これまで,屋外ではGPSを用いた位置測定技術が主流で様々なサービスが実現され,特に,ユーザのコンテキスト(行動の文脈)に基づいたサービスは,各ユーザの状況(位置や時間,習慣,嗜好など)に適応した情報提供サービスが開発されてきました。しかし,屋内では位置情報を基づいたユーザコンテキストに基づいたサービスがまだ発展途上段階であるといえます。またGPSでの屋外位置測定と異なり,屋内位置測定は,生活習慣や嗜好性などのユーザコンテキスト情報も,より精緻に扱うことができるはずです。そこで,高精度な屋内位置情報を利用して,屋内でのユーザコンテキストに応じ,日常的に気付きにくい点に気づかせたり,日常生活に役立つような情報提供サービスの開発に取り組んでいます。

具体的に,研究では,プログラムを使って,UWBセンサを使って高精度な位置情報(誤差50cm程度)を取得し,データベースにデータを蓄積します。それをもとに,日常的に有用なサービスを実現するために,位置情報データの分析手法やインタフェースを開発していきます。今年は,屋内オフィス空間での活動パターンの分析と推薦サービスの開発に取り組んでいます。

  • 学習者の思考状態に基づく適応型eラーニングシステムの開発

eラーニング(オンライン学習)は商用的なオンラインサービスにとどまらず,既に教育現場にも導入し活用されています。しかし,これまで学生が途中で止めてしまうドロップアウト率の高さや,学習者によっては理解度が極端に低くなってしまうことが問題となっています。その原因として,近年,オンライン学習が受動的な学習スタイルを強いる,つまり能動的学習による学習を難しくする傾向があるという点も,分かってきました。そこで,新たなeラーニングシステムとして,学習者の思考状態(コンテンツ理解度)に応じた学習方法(理解度が低いところを再度学び易くする方法)を提供する学習支援システムの開発に取り組んでいます。

具体駅に,研究では,プログラムを使って,eラーニングシステムを構築し,現状のシステムの問題点を解決するためのインタフェースとフィードバック機能を拡張しています。今年は,学習コンテンツごとの概念マップを用いた理解度の推定と振返りを支援する機能の開発に取り組んでいます。

  • Twitterの情報拡散現象の解明

Twitterは既に,口コミ・プラットフォームとして定着しています。口コミは古来から,文化や生活,市場や政治など社会に大きく影響を与える情報拡散行動であり,それがアプリケーション上で行われることで,Twitterの口コミデータを大量に収集し,定量的に情報拡散現象の分析が可能となりました。しかし,口コミが情報拡散する現象は複雑であり,それが発生する条件や相乗効果など未知な要因が多くあり,さらに分析手法も確立されていません。そこで,大量の口コミデータとそのユーザデータをもとに,統計的にモデリングを行い,情報拡散現象が発生する仕組みを解明しようとしています。

具体的に,研究では,文献調査をしながら分析対象(仮説)を設定します。次に,プログラムを使って,Twitterデータを自動収集し,それを統計的手法(機械学習法や時系列分析)に適用することで,情報拡散に寄与する部分(仮説に関係する部分)のモデルを構築し,シミュレーションによって分析します。今年は,情報拡散が影響(協調と競争)するカスケードモデルの構築,および情報拡散に寄与(リツイートするかどうか)に関するユーザモデルの構築,について取り組んでいます。

  • マルチモーダル情報分析に基づく創造的対話の解明

人間の社会活動において,対話によるコミュニケーションは欠かせないものです。グループ学習や企業でのプロジェクト活動,営業活動や就職インタビューなど,対話によって何かを成し遂げることは必須といえます。しかし,そのようなコミュニケーションの役割や機能については未知な部分が多く,単なる対話テキスト分析でも解明できない事象が多々あります。そこで,コミュニケーションを促進する,非言語情報である複数のモダリティ情報(マルチモーダル情報:身体動作,語気の強さ,声のトーン,会話ターン等)に着目し,創造的な対話を解明しようとしています。

具体的に,研究では,文献調査をしながら,仮説を設定します。次に,プログラムを使って,対話中の音声,映像を解析し,マルチモーダル情報を抽出し,仮説(例えば,情報伝達力の高さ,対話学習力の高さ)に帰着するような統計的な識別モデルを機械学習法等により構築します。今年はオンライン対話を中心に取り組んでいます。

研究室での活動

特に研究室のルールはないのですが,主な活動としては以下のような感じです。

  • 研究室ゼミは週1回1対1対話形式が基本で,学期末に全体発表を実施しています。基本的に土日,夏休み,冬休みは休みです。
  • 修士課程では,年1回の学会発表を奨励しています。学会は情報処理学会や電子情報通信学会等の,各研究分野の研究会に参加します。そうすることで,研究スケジュールが立てやすく,修士論文の執筆も非常に容易になります。また,国際学会の機会も用意しています。
  • 自己管理が難しい人(私も)は研究時間を含めた生活習慣作りが必要です。そこで,自分で研究室で研究する時間帯を決め,その時間帯を研究室で過ごすことを奨励しています。自己管理なので,教員は一切把握しません。用事や体調が悪いなど,自分で判断し休みます。現在の研究室では,平日3~4時間に設定する学生が多く,なかには自宅のみで研究している人もいます。